11.2.16

Foxes - All I Need

Release Date: 5 February 2016
Label: Epic

Tracklist:
01. Rise Up (Intro)
02. Better Love
03. Body Talk
04. Cruel
05. If You Leave Me Now
06. Amazing
07. Devil Side
08. Feet Don't Fail Me Now
09. Wicked Love
10. Scar
11. Money
12. On My Way
13. Shoot Me Down *
14. Lose My Cool *
15. All I Need *
16. Rise Up (Reprise) *

2013年に発表されたZeddのヒットシングル「Clarity」への客演を切欠に知名度を上げたUKの女性シンガーソングライター、Foxesのニューアルバム「All I Need」の感想。昨今のUKポップミュージック界では、Disclosure feat. Sam Smithの「Latch」、Rudimental feat. John Newmanの「Feel the Love」、Clean Bandit feat. Jess Glynneの「Rather Be」などを筆頭に、ダンスアクトの客演曲で先行ヒットするパターンがブレイクの布石となっていますが、今回紹介するFoxesもそんな"客演曲でブレイクしたアーティスト"の一人であります。しかし、先ほど挙げたSam SmithやJess Glynneらは自身の楽曲にも比較的ダンスミュージックの要素が入っていますが、彼女の場合ソロアーティストでやっているのはZeddのようなEDMではなく、それとは全く違ったインディーポップ色の強い音楽性。シングルの「Youth」や「Let Go For Tonight」辺りを聴けば分かると思うのですが、方向性としてはEllie GouldingやMarina and the Diamonds辺りのUK女性SSWに近い感じですね。1stアルバム「Glorious」はまさにインディーとポップスの中間地点を目指したようなポップアルバムとなっていて、良い意味で「Clarity」のイメージを裏切る内容だったんじゃないかな、と思います。決して客演ヒットに頼らず、例えチャート上の成績が振るわず中途半端な人気のままでもあくまでわが道をゆくフォクシーズたんですが、そんな彼女の1年9ヶ月ぶりの新作が遂に発売されました。安っぽいことこの上ないジャケ写で一気にテンション下がった今作ですが、果たして一体どんな内容になっているのでしょうか。

まずは制作陣について。これがとにかく豪華な顔ぶれで、プロデューサーにはClean BanditやYears & Yearsのアルバムに関わった新星Mark Ralph、Ellie GouldingやRae Morrisを手がけたJim Eliot、Siaの「Chandelier」を共作したJesse Shatkin、UK女性SSWご用達のベテランLiam Howeらを起用。そして共同ソングライターには、Hurts作品を手がけるJonas Quant、「Pompeii」の大ヒットで世界的ブレイクを果たしたUKのインディーロックバンド、BastilleのフロントマンDan Smith(A.K.A. ダン君 A.K.A. MY FUCKING MAN♥♥♥)、UK女性SSW作品に多数関与し、前作からのヒット曲「Let Go For Tonight」のソングライターでもあるKid Harpoon、初期Ellie Gouldingの名曲「Starry Eyed」「The Writer」を共作したJonny Lattimer、Adeleの「Someone Like You」を共作したDan Wilson、Lana Del Rey作品を手がけるRick Nowels、UKポップアクトのヒットメイカーHannah Robinson、さらには意外な所では大御所Babyfaceの名前まであったりと、とにかく前作以上にツボを突いてきた人選。全体的にインディーポップ色の強い旬な制作陣で、上記で挙げたアーティストが好きな人にとって今作はまさに打ってつけな内容とでも言えるでしょう。

そんな豪華プロデューサー&ソングライター達を従えて制作したニューアルバム「All I Need」ですが、今作のキーワードは"ゴスペル"。先行シングル「Better Love」や「Amazing」に代表されるように、ピアノとストリングスがメインのアレンジが多く、多重コーラスを取り入れたゴスペルテイストの力強い楽曲が中心となっています。特に「If You Leave Me Now」「Devil Side」「Scar」などの壮大なバラードや「Rolling in the Deep」風のソウルナンバー「Feet Don't Fail Me Now」なんかは前作に無かったテイストで、まさに今作を象徴するような楽曲と言えるでしょう。その一方でアンニュイディスコな「Body Talk」、アーバンレゲエテイストの「Cruel」、キュートで可愛らしいポップチューン「Wicked Love」「Money」のようなキャッチーな楽曲もあったりして、これらの楽曲がアルバムに良いアクセントを添えている。そしてインタビューで彼女自身が「よりエモーショナルなレコードになった」と語っていた通り、歌詞の方も傷心や恋人との別れを歌った曲が多いのですが、その反面、曲調や歌声にはより力強さが備わっていて、悩みを断ち切ろうとする"エモーション"が伝わってくるんですよね。ラストのシンプルかつ美しいピアノバラード「On My Way」では困難を乗り越えて"On My Way"を突き進もうとする彼女の強さと、"ハートブレイク"という辛い経験に打ちひしがれる脆さの両方を感じさせる一曲になっていると思う。"痛みを乗り越えようと前に進む力強さ"、これこそがこのアルバムの裏テーマと言えるでしょう。また、DX盤のみ収録のボーナストラック群も秀逸な楽曲ばかりで、キャッチーな四つ打ちダンスチューン「Shoot Me Down」「Lose My Cool」、前作の路線を踏襲したスケール感のあるタイトル曲「All I Need」、そして1曲目のボーカルバージョンとでも言える壮大なナンバー「Rise Up (Reprise)」と、どれもこれも本編に引けを取らない出来!特に「Rise Up (Reprise)」は個人的にアルバム本編含めて1、2位を争うほど良い曲だと思っているので、買うならDX盤をお勧めしたいです。

1stアルバムのインディーポップ路線を受け継ぎつつ、ゴスペルやR&Bなどのソウルミュージックのエッセンスが散りばめられた今作は、より彼女の紡ぎ出すヴォーカルとポップなメロディーに焦点を当てた温故知新な作風。そして旬のクリエイターを多数起用してるだけあって"UKポップミュージックの良いとこ取り"的な趣もあり、まさに"UKポップアクトの理想的な形"とでも言えるポップアルバムになっているんじゃないでしょうか。特に最多で参加しているMark Ralphのプロデュースワークにはそれが顕著に現れていて、彼の手がけたClean BanditやYears & Yearsなどの楽曲に近い"軽やかな空気感"こそが今作に聴きやすさとポップな質感を添えている。前作の「Youth」や「Let Go For Tonight」ほど「これだ!」と言えるキラーチューンがあるわけではないんだけど、個々の曲のクオリティが高く、全体の統一感もあってバランスの良いアルバムですね。個人的には何処と無く背伸びしてる感があった前作よりも等身大な彼女が伝わってくるこっちの方が断然好きですね。去年出たJess Glynneの1stアルバム「I Cry When I Laugh」にも匹敵するキャッチーで瑞々しい王道UKポップスが堪能出来る傑作!

ジャケットがお粗末な出来なのはこの際ご愛嬌と言う事にしましょう。