31.12.17

Best Albums of 2017 (20-01)

それではアルバム部門の発表です。

今年は世界情勢の影響なのか、それとも私個人の心境の影響なのか、例年以上にダークなアルバムにハマることが多かった。私自身2017年は本当に色々な事があったのですが、ダークだからこそ困難を乗り越えて前に進めたりコンプレックスを受け入れることが出来たり認めることが出来たりと、そんな気持ちを奮い立たせてくれるアルバムばかり今年は出会えました。

アーティストがインタビューとかで「音楽はセラピー」と言ってるのをよく見かけますが、それはきっと作り手も聴き手も関係なく同じセラピーであるなのかな、なんて思います。これは音楽に限らずどんな趣味にも言えることなんでしょうけど。

確かに音楽は願いを叶えてくれたり問題を解決したりしてくれない。
だけど、ちょっとした助けのひとつにはなるんじゃないかなって私は思う。

というわけで発表しますね。
今回は特に気に入ってる曲を抜粋してコメントなんか付けたりしています。


#20 Rationale - Rationale
Bastilleのフロントマン、Dan SmithがプロデューサーのMark Crewらと設営したレーベル、Best Laid Recordsからデビューしたジンバブエ出身の男性シンガーによるデビューアルバム。Princeのような80年代のテイストを塗したPBR&Bのプロダクションは今っぽいクールさがあり、それでいてSOHNやActive Childらに通ずる荘厳さを感じさせる。夜にじっくり聴きながら浸りたい一枚である。因みにBastilleの名曲「Fake It」のイントロで聴けるハイトーンヴォイスは彼の歌声なのだが、Rag'n'Bone Manと同じく、彼もまたDanの采配で知った存在なのである。

Loving Life
こういった浮遊感のある爽やかな楽曲を歌いこなせるのも彼の強みのひとつであろう。

Tumbling Down
アルバム中1番にキャッチーな楽曲。パワフルなサウンドと歌声が鼓舞してくれる。


#19 Taylor Swift - reptations
出ヲチ・オブ・ザ・イヤー。

Look What You Made Me Do
一時期、仕事中ひっきりなしで心に響いていた。結局の所、私も彼女のこういう性格に共感してしまう性質なのかもしれない。

Call It What You Want It
こんなにも儚く美しいポップソングの中にさえ「嘘吐きたちが私を嘘吐き呼ばわりする」などと生々しい恨み節を潜ませている辺り、この女は今後も絶対に謝ったりしないだろうな、と確信した。


#18 Charli XCX - Pop 2
今年2本のPC Music路線のミックステープを発表したCharli XCX。前作「Number 1 Angel」は従来の彼女のイメージに近い作風であったのだが、今作はより多種多様なゲストを向かえつつ、更にPC Music色を強めた内容となっている。以前、ミックステープと言う媒体が普通のオリジナルアルバムとどう違うのか検討がつかなかったのだが、おそらく"自由にやりたいことが出来る"という姿勢がより深く反映されているのがミックステープの方なのだろうと考えた。

Backseat (Feat. Carly Rae Jepsen)
ドスケベ女子のコラボである。「All alone」と何度もリフレインするサビはとにかく美しく、失恋で負った深い悲しみすら癒してくれそうだ。

Tears (Feat. Caroline Polachek)
惜しくらむも今年解散を発表したシンセポップバンド、ChairliftのVo.であるCarolina Polachekとのデュエット。アゲなダンスアンセムだけでなく、このミックステープは切ないバラード郡も一際輝いている。「Backseat」もそうなのだが、Charli XCXの歌うバラードはなかなかに心を揺さぶるものが多いのだ。


#17 Sampha - Process
内向的でアートなエレクトロR&Bが堪能できるアルバム。聴くものを圧倒する芸術性を持ちながらも、あくまで彼の歌声が主軸となっていて、取っ付き易さもある所が肝か。しかしこのキス顔みたいなジャケットは一体どういうつもりなのか最後まで解明出来なかった。

Plastic 100℃
アルバムの始まりを告げるのはオリエンタルな音使いの深遠なバラード。この1曲で私はこのアルバムに惹き込まれていた。

Kora Sings
こちらでも和楽器のような笛の音が使われているオリエンタルなナンバー。ドカスカしたドラムビートはAmeriieっぽくもあり、懐かしさを感じた。


#16 Arcade Fire - Everything Now
「Everything Now」は爽快で美しいポップソングであるが、それ以降はいつもの彼ららしい一筋縄ではいかないヘンテコリンな楽曲が続く。"怪作"という単語こそこのアルバムにピッタリなのではないだろうか。気づいたら何度も繰り返し聴いていた。しかし批評筋からの評価が今回良くないのは何となく理解出来た。

Creature Comfort
最初から最後まで狂ったノリで思わず暴れだしたくなるクレイジーな一曲だ。

We Don't Deserve Love
珍奇な曲が続く中、このように大団円を飾る美しいバラードが待ち受けていたなどと、聴く前の私は予想だにしていなかったのである。


#15 Mura Masa - Mura Masa
彼を単なるトロピカルハウスを得意とする人だと思ってはいけない。このアルバムを聴けば多彩なゲストの人選と同様、多彩なサウンドで彩られているのだから。

What If I Go (Feat. Bonzai)
とてもオシャンティな1曲だが、歌もラップもこなせるBonzaiが複数の曲に参加している辺り、彼女の存在がこのアルバムに一番貢献しているのかもしれない。

Second 2 None (Feat. Christine And The Queens)
ヴォーカリストにShuraを迎えた名曲「Love For That」は未収録に終わったが、代わりにそれに匹敵する名曲がこのアルバムに収録されていた。それがこの曲だ。


#14 Kelela - Take Me Apart
Kelelaは憧れのアーティストにBjörkとBrandyを挙げていたが、まさにこの二人のアーティストが好きな私にとってこのアルバムはドンピシャだった。彼女の歌声は無機質で緻密に作られたトラックの中で聴いても温かみがある。それはSamphaのアルバム同様、"歌"に焦点が当てられた作りになっているからだろう。

LMK
クラブでこの曲が爆音でかかった瞬間、私は悦に浸り、踊り、練り歩き、仕舞いには昇天してしまいそうだ。

Onanon
変則的なビートと切ないメロディーが絡み合うフューチャリスティックな一曲。この曲で彼女は上手くいかない恋愛関係に対する心情を吐露している。


#13 Ed Sheeran - ÷

No comment.


#12 Katy Perry - Witness
今までの親しみやすいポップ路線を消し去り、"真にファッキンダーク"な新作を携えて帰ってきたKaty Perry。ひたすら狂気に満ちた楽曲が続くため、最初に聴いた時は頭に疑問符が大量に浮かんでくるだけで終わったが、聴けば聴くほどのめり込むようにハマっていった。仄暗いエレクトロポップなプロダクションとまんま80年代の毒々しいビジュアルイメージの親和性の高さも計算のうちか。彼女の次なる一手がどう来るか、今後も楽しみにしていたい。

Swish Swish (Feat. Nicki Minaj)
"Taylor Swiftに対するdis返し"という触れ込みの一曲だったはずだが、気づいたら爆笑を提供してくれる一曲へと変貌を遂げていた。「黒子のバスケ」も真っ青の名バヌケプレイヤーを演じたMVにも乾杯である。

Miss You More
こういう大袈裟なバラードもちゃんと忘れず入れてくれる辺りにKaty Perryの良心を感じる。


#11 Passion Pit - Tremendous Sea of Love
前作の明るくドポップなサウンドから一転して内向的でアンビエントなアルバムへと深化を遂げた。Michael Angelakosが同性愛者としてカミングアウトした後に発表された新作だからだろうか、いつも以上に心打たれる楽曲が多かった。時に穏やかで、時に激しい、海と人の感情は途轍もなくよく似ている。

Tremendous Sea of Love
インストなのだが、聴くだけでどうしようもなく感情を揺さぶられてしまう。

I'm Perfect
もはやシングル化してもおかしくない位にキャッチーなポップソングだが、サビでは「いつだって君は完璧だよって言ってくれよ」と切実に訴えかけている。能天気な曲調の中にシリアスなメッセージ性が込められている所は健在だ。


#10 Gorillaz - Humanz

レジェンドから注目の新人株までジャンル問わず超豪華面子で揃えてきたGorillaz久々のニューアルバム。時代を読んだ今風のサウンドと古き良きクラシックスタイルが融合したタイムレスな楽曲ばかり収録されていて、Damon Albarnのセンスと本気が伺える。暗く悲しい世界と化している今だからこそ、このような煌びやかで少しダークなパーティアルバムが必要なのかもしれない。人間は楽しむことが生きがいなのだから。

Submission (Feat. Danny Brown & Kelela)
無機質でピコピコしたテクノトラックが面白く、Kelelaの歌声がよく似合っている。

Charger (Feat. Grace Jones)
"Feat."と言うより"召喚"という言葉の方が似つかわしそうな狂気のコラボレーションだ。

Busted and Blue
アルバム中唯一Damon Albarnによる単独作曲&歌唱によるナンバー。そのためBlurの曲として聴いてもおかしくない位のDamon印な一曲だが、豪奢なパーティーアルバムの中でこの哀愁漂うシンプルなアンビエントバラードの存在が一際いいアクセントを置いているように思える。


#09 Lana Del Rey - Lust For Life

「若くて恋をしてるならそれでいいじゃない」、先行シングル「Love」でLana Del Reyはこう歌っている。以前のLanaは「もし私が若さと美しさを失っても、それでもあなたは愛してくれる?」と不安と焦燥を曝け出していたが、今のLanaはあの頃とは違う輝きを手に入れた。「辛く悲しい事があっても貴方は貴方でいいのよ」と他の誰かに語りかけているのだ。そう、「Lust For Love」は生きる事を賞賛し祝福を贈るアルバムである。

Beautiful People Beautiful Problem
「美しい人々、美しい問題」というタイトルは象徴的だ。とても"Beautiful"とは形容できない"Problem"という重い意味合いの言葉に"Beautiful"と形容することで、そこに救いを見出すことが出来る様に思える。例え深刻な問題を抱えていてもそれは決して間違いではない。それでも人々は美しいと言えるのだ。

Change
自分を変えることはとても難しい。だけど難しい分、人は変われば強くなれる。この曲ではその強さと変化の持つ力について歌っている。

Get Free
自由を手に入れたその先で待っているのは天国かそれとも虚無なのか、それは誰にも分からない。召されたような、或いは醒めることなく永遠に眠り続けるような、そんな余韻をこの曲では与えてくれる。


#08 Beck - Colors

例えばインディーロック畑のオリジネイターがポップミュージック界に殴り込みをかけるとフォロワー達が瞬時に焦土と化す。Beckの「Colors」もそんな強力なポップアルバムのひとつだと言っておきたい。

Colors
イントロから既に私の好きなBeckが帰ってきた!と歓喜した。しっとりアコースティックに聴かせるBeckもいいが、やはり私は元気でアッパーなBeckの方がずっと好みだ。

I'm So Free
ラウドに響くギターサウンドが印象的なロック。サビでは「俺はこんなにも自由だぜ!」と歌っている。

No Disctuction
このフレッシュで甘酸っぱいポップチューンを書いたのが47歳の中年男性なんだから恐れ入る。作中で一番好きな曲だ。


#07 Björk - Utopia

Björkの表現方法がここにきて再び明確で分かり易くなっている。前作「Vulnicura」と同様Arcaとのコラボレーションによる作品だが、前作とは対を成す明るくアップビートなアルバムであり、とにかくポップだ。ジャケットでBjörkは手にフルートを持っているが、今作ではフルートの美しい音色が随所に配されている。Arcaの織り成すエレクトロビート、フルートの音色、Björkの歌声、この3つの要素がこのような壮美な桃源郷を作り上げたのだ。

The Gate
アンビエントで薄暗いサウンドの中「貴方を気にかけてるのよ……」と歌う。MVもドスケベ極まりない仕上がりだ。

Courtship
Björkのアップナンバーは貴重だが、この曲はArcaとのコラボなしでは生まれなかっただろうと想像している。

Losss
何も全てが明るい曲ばかりなわけではない、「Homogenic」を彷彿とさせるようなダークで激しい楽曲だって今作には収録されている。楽曲が進むにつれて美しい理想郷がだんだんノイズで破壊されていくようなコントラストが描かれており、これは人間関係が壊れゆく様子のメタファーなのだろう。


#06 Goldfrapp - Silver Eye

伸び縮みするかの如くアルバム毎に柔軟に音楽性を変えてきたGoldfrappがここにきて原点回帰を果たした作品。1st、2ndの頃のダークなエレクトロ路線に戻りつつ、よりソフィスケイトされた音に研ぎ澄まされており、もはや熟練の域に達している。セクシャルな雰囲気を醸し出す今作のMVの数々もLGBTから根強く支持される彼らならではの仕事ぶりだ。

Systemagic
久々にアグレッシヴなGoldfrappが聴ける先鋭なエレクトロナンバー。MVもとにかく攻めている。

Zodiac Black
アルバム中最もカオティックな展開を見せる楽曲。終盤の金切り声のような叫びは圧巻だ。

Ocean
地獄の底から這い出てくるような禍々しいナンバーで不穏にアルバムの幕を閉じる辺り、業の深まりを感じる。


#05 The xx - I See You

The xxと言えば今までダークで密室的なイメージがあったが、このアルバムはとにかくポップで開放感に満ちており、従来のイメージを打ち破っている。それでもこのアルバムが傑作であることは言うまでもない。冬の晴れた日に聴くのにピッタリの1枚だ。

Dangerous
人生でランウェイを歩く機会があったら是非ともこの曲を流したい。無論、人生そのものが華やかなランウェイでもあるのだが。

Lips
この曲では別れた恋人の存在が頭の中から離れられない心情を歌っている。想い出は常に亡霊のように付きまとうものだ。

Brave For You
繊細で美しいバラードだからこそ、余計に勇気付けられるのだろう。

Test Me
今作はダンサブルなアップアンバーが多めに含まれているが、ラストは彼ららしいアンビエントな楽曲で少し悲しい余韻のままアルバムは幕を閉じる。


#04 Lorde - Melodrama

大失恋を経験した末に作り上げられたこのアルバムは彼女自身のメロドラマだ。「この大嘘吐き。アンタなんか鮫に噛まれてしまえばいい」と怨念を吐き捨てた1曲目から感情の旅路が始まる。そして時には激情に駆られ、時には悲しみに打ちひしがれ、最後に立ち上がり「完璧な場所を目指すわよ」と啖呵を切る。しかしそれでも彼女は疑問に思う、「ところで完璧な場所って何処なのよ?」と。このメロドラマは決してハッピーエンドを迎えたとは言えないが、多くの人々の心に大きな影響を与えたのは間違いないだろう。それぞれの完璧な場所を見つけるまでこの旅路は続くのだ。

Sober
「だけど私達は気にしてるの、しらふで私達は何をするのかしらって」
パーティーの最中でも彼女は平然と真理を突きつける。

The Louvre
「貴方の句読点の使い方が私を深読みさせる/私の所為じゃない 勝手に頭がそう考えてしまうの」、分かりみの過ぎる一文である。それがただの勘違いであったとしても、そうじゃなかったとしても、たとえ些細な事でも大切に想っている相手のそれは時に自分を酷く苦しめるものなのだ。

Liability
本当の自分を誰にも理解してもらえない悲しみを歌った曲だ。「みんなが言うの、「あなたは重すぎる、重荷になってしまうよ」って/人々を焦らせる、そしてみんな離れていく/私は人より少し重いのね」、あまりにも痛ましく悲しみに満ちたこの歌に、同じ境遇にいる人々は共感を得、または涙する。筆者もそのうちの一人である。

Supercut
失恋で負った傷は時間が癒してくれる。ただ、人によってはそれは少々時間がかかるものなのかもしれない。相手を想う心が強ければ強いほどだ。


#03 Zola Jesus - Okovi

タイトルの意味は"束縛"だが、自身を束縛しているのは他の誰でもなくもしかしたら自分自身なのかもしれない。自身を束縛するあらゆる苦しみや悲しみを生々しく語り、叫び、呻くが、アルバムが進むにつれてだんだん光が差し、最後の「Half Life」で全てが浄化されていく。このアルバムは非常にダークで重苦しいが、それと同時に強い希望も感じることの出来る作品である。

Exhumed
"死者の復活"とでも形容出来そうな禍々しいこと極まりない曲だが、まさにその通りである。しかしこれは始まりに過ぎない。

Soak
シリアルキラーについての歌らしいが、恐ろしい女の情念にしか聴こえないのは気のせいだろうか。「あなたは知るべきだったのよ。私があなたを決して溺れさせたりするようなことはしないって」。

Witness / Siphon
どちらも自殺した親族に捧げた歌らしい。前者では救うことが出来なかった後悔と自責の念を、後者では自殺を考えている人々に向けての希望と救済を歌っている。同じテーマで視点は異なれど、どちらも間違いなく彼女のパーソナリティーを反映した楽曲なのだろう。

Remains
彼女にしては異例とも言えるハイテンポでトリッピーな楽曲だが、持ち味の荘厳さも備わっていて、まるでタイムスリップしている最中のような錯覚に襲われる。


#02 St. Vincent - MASSEDUCTION

本人曰く「真実かどうかは分からない」とのことらしいが、これはおそらく今までの彼女の作品の中で一番パーソナルなアルバムと言えるのかもしれない。私はポップソングにはロックやヒップホップ以上に感情を揺さぶる力があると信じているのだが、このアルバムには全編に渡ってその力が宿っているように思える。"怒涛の誘惑"というタイトルが示す通り、聴けば聴くほどどんどん夢中になってしまう過激で危険なポップアルバムなのだ。

Sugarboy
「私も貴方達と同じようなものよ、ボーイズ/私も貴方達と同じように孤独なのよ、ガールズ」、ハイテンションに暴走していくエレクトロポップサウンドに乗せて彼女はそう宣言する。そう、これはSt. Vincent流"本当のワタシ"ソングだ。

Los Ageless
強烈に繰り出される風刺が痛快でもあり胸をえぐられるようでもある。

Happy Birthday Johnny
このシンプルなピアノバラードに登場するJohnnyとの関係性は恋人とも言えるし姉弟とも言えるが、おそらくもう二度と会えない間柄なのだろう。ほろ苦く切ない心情を日記のように綴り、最後はJohnnyに向けて祝福の言葉を贈っている。

Young Lover
アルバム中最もエモーショナルな曲ではなかろうか。最後のシャウトの連続が圧巻だ。


#01 Tove Lo - BLUE LIPS [lady wood phase II]

傑作だった前作「Lady Wood」の続編となるアルバムはまたしても傑作だった。「Lady Wood」が微熱を帯びるようなドロドロした情念と例えるなら、今作は激しく燃え上がる炎のような激情と言ったところだろうか。そしてこの真っ赤なアートワークは「青い唇」というタイトルに反したコントラストが表現されており、それは宇多田ヒカルの名盤「ULTRA BLUE」を連想させる。とにかく"赤"という色の持つイメージ通り、激しい感情が込められたアルバムになっている。

そして今作も彼女特有の悲しみややるせなさを表現した楽曲が多く、それは前作からも共通しているが、抑圧的で絶望感のあった前作とは異なり、今作は追い詰められた状況の中にも希望を見出そうとしている前向きさが受け取られる。そこには一歩間違えれば破滅に向かう危険性すら孕んでいるが、それでも私は貴方を愛する、貴方を好きでいる、という大切な人を想う愛情こそがこのアルバムの根源に位置している。

「Blue Lips」はどんな形であれ人を愛することの強さと弱さを歌ったアルバムだ。決して正しいとは言えない間柄でも人を愛することには変わりない、それを肯定するのも正しい導きの一つとなりえるのだろう。

余談だが、年間ベスト1位に選んだアルバムをフィジカルで所持していないという現象は今年が初である。時代の変化を痛感しているが、それでも切実にCDでもリリースして欲しい事を私は願っている。

Shivering Gold
"泣きながら踊るダンスミュージック"を聴きたいならこの曲を聴くことをお勧めしたい。

Stranger
「暗闇の中の貴方は他人みたい/私の心は孤独なのよ」、彼女は恋人にそう懇願する。例え愛する人が傍にいても、そこに愛がなければまるで他人のようであり、一人でいることよりも強い孤独を感じるものだ。Tove Loはそれをよく知っている。

Romantics (Feat. Daye Jack)
「私たちの人生、ロマンティックになれるかも。夢中になるのよ、永遠に癒えない傷と共に」、この曲に限らず、このアルバムからは"絶望の中の希望"というテーマが見えてくる。

Hey You Got Drugs?
前作「Lady Wood」同様、ラストを飾るのは疑問系のタイトルの曲だが、こちらは少しだけ希望が感じ取られる。「あなたは私のために夜も惜しまない」、彼女はそう繰り返し、エモーショナルに締めくくる。愛に生きる女はとても強い。


以上、尻ジャケがワンツーフィニッシュをキメたアルバムランキングでした。
次回はSweet & Amazing Music Awards 2017の結果発表です。